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                        | 1.はじめに | 
                       
                      
                        | 
                        
                         | 
                       
                      
                        2009年12月の展示で、「絵のないものに絵をつける~ヨーロッパ編」と題し、『赤ずきん』の挿絵の違いを比較しながら、昔話に絵をつけることの難しさを確認しました。 今回の「日本編」では、私たちが共通して持っている『浦島太郎』のイメージがいつごろ成立したのか、本学所蔵資料で確認していきましょう。 
                         | 
                       
                      
                         
                         
                         | 
                       
                    
                   
                  
                    
                      
                        | 2.最古の記録 | 
                       
                      
                        | 
                        
                         | 
                       
                      
                        | 浦島太郎の伝説は、現存する最古の資料として、『日本書紀』の雄略天皇二二年の条に見ることができます | 
                       
                      
                         | 
                        日本書紀 ; 3. / 武田祐吉校注. -- 6版. -- 朝日新聞社, 
1964. 
                        資料ID:20101985請求記号:918/49/53配置場所:3階N2 | 
                       
                      
                        <大意>丹波の国の水の江の浦島子(子は蘇我馬子・孔子等と同様に男性の意味)が舟に乗って釣りをし、大亀を釣り上げたが、それが女に変わり、感動して一緒に海に入り、蓬莱山へ行った。続きは別巻。 
                         助けた亀ではなく、釣った亀が女になり、竜宮城ではなく蓬莱山(ほうらいさん)に行きます。 | 
                       
                      
                        | 同じ頃に作られた『丹後国風土記』逸文(散逸してしまい、他書に引用されて伝えられているもの)や、『万葉集』にも浦島子の伝説が記載されています。 | 
                       
                      
                         | 
                        日本書紀 風土記 / 植垣節也校訂・訳. -- 小学館, 2007. -- (日本の古典をよむ ; 
3). 
                        請求記号:918/Ni/3資料ID:30751088配置場所:3階N2 
                         | 
                       
                      
                        
                        
                          
                            
<大意>前任の国守の伊予部連馬養(いよべのむらじ うまかい)が記しているが、雄略天皇の御世、水の江の浦嶋子が、五色の亀を釣り上げたが、亀は突然女性になり、語らって結婚し、蓬莱山へ舟で向かった。3年ほど暮らし、望郷の念がおこったところ、乙女より愛用の玉篋(たまくしげ)を絶対に開けるなと渡された。しかし故郷に戻ると、人や物がすっかり変わっており、聞くと既に三百年余がたっているという。堪らず嶋子は玉篋を開けたところ風雲がわき起こり、空に飛んでいってしまった。 
                               玉篋(たまくしげ)=玉手箱が出てきました。ここでも竜宮城ではなく蓬莱山ですね。 
                               
                               | 
                             
                            
                              この話をもとにした「水江の浦の島子を詠みし一首」が、『万葉集』巻九の1740に収められています。 そこでは、島子は海の神の宮に行き、玉手箱を開けると白雲が出て、老人になってしまいます。 だんだん私たちのよく知る「浦島太郎」に近づいてきました。 
                               | 
                             
                            
                               | 
                              彦火々出見尊絵巻・浦島明神縁起. -- 中央公論社, 1977. -- (日本絵巻大成 / 小松茂美編 / 
22).  
                              資料ID:20618193請求記号:721.2/3配置場所:3階M3 | 
                             
                          
                         
 | 
                       
                      
                        『浦島明神縁起』は、宇良神社に伝わる絵巻で、南北朝時代の作品とされています。  絵の蓬莱山は唐風の建築で、浦嶋子や姫・女官たちも唐風の衣装です。  普通、絵巻は詞書と絵が交互に反復するのですが、この『浦島明神縁起』には詞書がありません。  しかし宇良神社には『続浦嶋子伝記』が伝わっており、同じ筋で話が進むので、この伝記を種本として、絵巻が絵解きされていたと考えられています。  この絵巻は縁起(神社仏閣の沿革)なので、浦島太郎が死んだ後、筒川大明神として祀られ、そこに人々が集まるという後日談も続きます。 | 
                       
                      
                        | 『続浦嶋子伝記』は『浦島子伝』とともに平安時代に書かれ、『群書類従』で現在に伝わっています。 | 
                       
                      
                         | 
                        群書類従 / 塙保己一編. -- 第9輯. -- 訂正3版. -- 続群書類従完成會, 
1960. 資料ID:20077938請求記号:081/7/9配置場所:3階R5 | 
                       
                      
                        第9輯:浦嶋子傳,續浦嶋子傳記(成立:10世紀初頭) <大意>300歳なのに若々しい仙人の浦嶋が釣りをして、大亀を釣り上げた。舟に乗せるとたちまち美しい女に変身し、蓬莱山へと導く。そこで結婚し、大層もてなされ、仙術を授けたり、不死の薬を飲んだりして過ごしたが、故郷が恋しく帰ることになった。女は開けてはならないと言い含めて玉の箱を手渡す。 浦嶋が水の江の浜に上がると、その余りの変貌に驚き、107歳の老女に聞くと、自分の祖母の時代に浦嶋子という人が行方不明になったと言う。あまりに悲しくて思わず、玉の箱を開けてしまうと、みるみるうちに老爺になった。 
                         | 
                       
                      
                        蓬萊(ほうらい)山は古代中国で東の海上にあり、仙人が住む五神山のうちの1つとされ、中国神話等では霊亀が背中に乗せている絵がよく描かれています。有名なところでは竹取物語にも出てきます。 
                         | 
                       
                      
                         | 
                        さよひめ ; いはや ; ほうらい物語 / 京都大学文学部国語学国文学研究室編. -- 臨川書店, 
2000.12. -- (京都大学蔵むろまちものがたり / 京都大学文学部国語学国文学研究室編 ; 6). 
                        資料ID:30456860請求記号:913.49/8/6配置場所:3階P1 | 
                       
                      
                         | 
                       
                      
                        | 3.御伽草子 | 
                       
                      
                        | 
                        
                         | 
                       
                      
                        14世紀から17世紀にかけて、その当時に流布していた全国各地の説話や民間伝承、古典・軍記物の中のエピソードなどを切り出して、短編の物語草子が多数作られました。これを「お伽草子(おとぎぞうし)」「御伽草子」「室町物語」と総称しています。もっともこれは後からつけられた名称で、江戸時代の大坂の書肆、柏原屋渋川清右衛門が「御伽文庫」として、二十三冊揃いで出版したところ、そう呼ばれるようになりました。  絵を伴うものが多く、形態は絵巻物、奈良絵本、丹緑本など多種多様です。  浦嶋子の伝説も御伽草子により『浦島太郎』と名づけられました。この頃から竜宮城が登場します。 
                          
                         | 
                       
                      
                         | 
                        御伽草子絵巻 / 奥平英雄編. -- 角川書店, 
1982. 資料ID:30262133請求記号:721.2/26配置場所:3階M8 日本民芸協会所蔵『うらしまの太郎』と題する絵巻で、成立は室町後期絵巻。 | 
                       
                      
                         | 
                        浦島太郎. -- 三弥井書店 , 1972. -- (御伽草子 / 市古貞次編 ; 
21). 資料ID:20513771請求記号:913.49/1配置場所:1階C11 | 
                       
                      
                        <大意>丹後の国の浦島太郎は亀を釣り上げ放してやると、翌日女(亀の化身)が現れ、家まで送る約束をする。着いた所は四方を四季の庭に囲まれている竜宮城で、そこで二人は結婚したが、3年後望郷の念にかられた浦島太郎は、故郷に帰り七百年たっていたことに気づく。妻が形見にくれた箱を開けると、たちまち年寄りになり、鶴となって空に上がった。亀(妻)も万年を生き、共に明神として祀られた。 
                         “竜宮城”という言葉が出てきます。建物は寝殿造りで、女の衣装は十二単です。竜宮城の周りが四季の庭と表されています。 
                         | 
                       
                      
                         | 
                        御伽草子・舞の本 ; 1 -- 雄松堂書店, 1983. -- (東京大学総合図書館所蔵霞亭文庫 / 東京大学総合図書館 ; 
1) 請求記号:918.5/6/1-2資料ID:20885762配置場所:マイクロ 「うらしま太郎物語」40丁 
刊年不明 
                         | 
                       
                      
                        服装は和装ですが、竜宮城の楼門がいわゆる竜宮造になってきました。 
                         | 
                       
                      
                         | 
                       
                    
                   
                  
                    
                      
                        | 4.誰でもご存知浦島太郎 | 
                       
                      
                        | 
                        
                         | 
                       
                      
                        江戸時代に入ると、赤本(子ども向け絵本)ばかりでなく、それをモチーフにした浄瑠璃や小説などが多数作られました。 
近松門左衛門は人形浄瑠璃で『浦島年代記』を発表し、享保七年三月大坂竹本座で初演されました。その後、『浦島年代記』は歌舞伎になり、それを元にした草双紙も作られます。 
                         
                         | 
                       
                      
                         
 | 
                        近松全集 / 近松門左衛門 [著] ; 近松全集刊行会編纂 ; 第17巻 影印編. --岩波書店, 
1994 
                        請求記号:912.4/27/17-2資料ID:21523441配置場所:3階P2 | 
                       
                      
                         | 
                        黄表紙 / 山東京傳 [著] ; 山東京傳全集編集委員会編 ; 3. -- ぺりかん社, 1992. -- 
(山東京傳全集 / 山東京傳 [著] ; 山東京傳全集編集委員会編 ; 
第3巻). 
                        資料ID:30466517請求記号:913.53/5/3配置場所:3階P1 
                        「浦嶋太郎龍宮羶鉢木(ウラシマタロウ 
タツノミヤコナマグサハチノキ)」 
                         
                         | 
                       
                      
                        | その他にも、竜宮城が登場する昔話や小説も多数刊行され、画工たちは思い思いに“竜宮城”を描いていきます。 | 
                       
                      
                         | 
                        草双紙集 / 木村八重子[ほか]校注. -- 岩波書店, 1997. -- (新日本古典 文学大系 ; 
83). 
                        請求記号:918/42/83資料ID:30314429配置場所:0350:3階N2 
                        「亀甲の由来」 宝暦ごろ刊 
                         | 
                       
                      
                        冒頭が「浦島太郎」で始まり、昔話の「猿の生き肝」に続きます。浦島が帰る折、乙姫の調子が悪くなったので、浦島に治療の相談をしたところ、猿の生き肝を勧めます。 
                         | 
                       
                      
                        竜宮城の出てくる話は日本では古くからありました。 竜宮に奪われた宝玉を海人が自分の体内に隠して取り返したという「玉取伝説」や、謡『海人』、近松門左衛門作の浄瑠璃『大職冠』などで、竜宮=唐(中国)のイメージができあがったのかもしれません。 
                         | 
                       
                      
                         | 
                        たいしよくはん 【五-3-2-9】(2179685)  読み たいしょかん  形態 刊半 
 冊数 一冊  行・丁 9行34丁  
                         | 
                       
                      
                        <大意>唐の太宗皇帝は、日本の大職冠藤原鎌足の娘を后に定め、結納の面向不背の宝玉を日本に送りますが、途中志戸浦で宝玉を竜宮に奪われてしまいます。  鎌足は、その玉を志戸浦の海女に取りに行かせますが…(後略) | 
                       
                      
                         | 
                        国芳妖怪百景 / [歌川国芳画] ; 悳俊彦編・解説 ; 須永朝彦文. -- 国書刊行会, 
1999. 
                        資料ID:30782136請求記号:721.8/Ut配置場所:3階M8  『竜宮玉取姫之図』 | 
                       
                      
                         | 
                       
                      
                         
                        5.教科書になった浦島太郎 
                         
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                        伝説・昔話は口承文学のため、各地で筋に違いが見られます。 ところが昔話が活字となり、大勢の人が目にすると、話の筋も次第に固定されてきます。 
                         
                         | 
                       
                      
                         | 
                        日本昔噺 / 巖谷小波著 ; 上田信道校訂. -- 平凡社, 2001.8. -- (東洋文庫 ; 
692). 
                        資料ID:30477896請求記号:080/3/414配置場所:3階Q文庫本 『第18編 
浦島太郎』明治29年2月25日刊 
 | 
                       
                    
                   
                  
                    
                      
                        巌谷小波は日本各地でおおぜいの子どもたちの前でお話を語る会、口演童話を開きました。 
                         | 
                       
                      
                        | 教科書に採用されたことで、さらに筋の固定化に拍車がかかりました。 | 
                       
                      
                         | 
                        小學讀本便覧 / 古田東朔編. -- 第6巻. -- 武蔵野書院, 
1983. 資料ID:21031250請求記号:375.8/59配置場所:3階L14 『尋常小学読本』巻三 明治43年度より使用 | 
                       
                      
                        | 「浦島太郎」は明治43年度に使用が始まった第二期国定国語教科書から昭和24年までずっと掲載され、その後検定教科書になってからも昭和51年の教育出版刊『新版こくご 
1年 上』まで各社の教科書に載せられています。 | 
                       
                      
                         | 
                        よみかた 3./ 文部省編. -- ほるぷ出版, 1982.-- (文部省著作国定教科書 : 
国民学校用) 資料ID:20461539請求記号:375.9/40配置場所:3階M18 
                        昭和16年刊 | 
                       
                      
                         | 
                        ヨミカタ 1・2 ; よみかた 3・4. -- 大空社, 1984. -- (文部省著作暫定教科書 : 
国民学校用). 
                        資料ID:20837594請求記号:375.9/4配置場所:3階M18 
                        昭和21年発行 | 
                       
                      
                         | 
                        こくご 4. -- 複刻版. -- 大空社, 1984.--(文部省著作戦後教科書 ; 
第二学年後期用)  
                        資料ID:20837815登録番号:2083781配置場所:3階M18 
                        昭和22年から昭和24年 国定としては最後の国語教科書 | 
                       
                      
                        唱歌になったことで、人口に膾炙したことはもう疑いありません。 これにより、浦島太郎が乙姫と結婚したことや、竜宮城が四季の庭に囲まれているという通念はすっかりなくなってしまいました。 | 
                       
                      
                         | 
                        唱歌 / 海後宗臣編纂. -- 講談社, 1965. -- (日本教科書大系 / 海後宗臣, 仲新編 ; 近代編 
第25巻). 
                        資料ID:20308391請求記号:357.9/7/25配置場所:3階L14 | 
                       
                      
                         | 
                        幼年唱歌 初編中巻』(尋常小学校第一学年第二学年用)明治33年9月発行 作曲:田村虎蔵  「唐門」「乙姫様に気に入られ」「三年暮らす」という詞が出てきます。 | 
                       
                      
                         | 
                        大人のための教科書の歌 / 川崎洋著. -- いそっぷ社, 1998. 
                        請求記号:767.7/6資料ID:30375956配置場所:3階M7 『尋常小学唱歌 第二学年用』 明治44年5月発行  ご存知♪むかしーむかしー浦島はー の歌。昭和45年まで掲載されていました。 
                         | 
                       
                      
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                        | 6.うらしまたろう絵本 | 
                       
                      
                        | 
                        
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                         | 
                        うらしまたろう / 松谷みよ子文・岩崎ちひろ絵. -- 偕成社, 
1989. 資料ID:30056428請求記号:726.5/53-3配置場所:3階パソコン自習室 | 
                       
                      
                         | 
                        うらしまたろう / 時田史郎再話 ; 秋野不矩画. -- 福音館書店, 1974.3. -- 
(日本傑作絵本シリーズ). 
                        資料ID:70010336請求記号:726.5/55C/44配置場所:3階パソコン自習室 
                         | 
                       
                      
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                        うらしまたろう / 西本鶏介文 ; 高橋信也絵. -- ポプラ社, 1991. -- (アニメむかしむかし絵本 ; 
7). 
                        資料ID:11127833請求記号:726.5/Ur所蔵館:ポーアイ 
                         
                         | 
                       
                      
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                        浦島太郎 / 笠松紫浪絵 ; 千葉幹夫文・構成. -- 講談社, 2001. -- (新・講談社の絵本 ; 
7). 
                        資料ID:11126430請求記号:726.5/Sh/7所蔵館:ポーアイ  昭和10年代「講談社の絵本シリーズ」の復刻。 
                         | 
                       
                      
                         
                         
                         | 
                       
                    
                   
                  
                  
                    
                      
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                        室町物語草子集 / 大島建彦, 渡浩一校注・訳. -- 小学館, 2002.9. -- (新編日本古典文学全集 ; 63). 
資料ID:30510791請求記号:918/51/63配置場所:3階N2 
 
室町時代物語集 / 横山重編. -- 第5. -- 井上書房, 1962. 
請求記号:913.4/12/5資料ID:20156367配置場所:0367:3階P1 
 
「寝覚浦嶋太郎略縁起」第68輯:説話資料集.碧冲洞叢書 / 簗瀬一雄編著. -- 第10巻. -- 臨川書店, 1996.(絵なしテキストのみ) 
請求記号:910.8/58/10資料ID:30267428配置場所:1151:1階C9 
 
校註日本文学大系 / 国民図書編. -- 第19巻. -- 再版. -- 国民図書, 1927.(絵なしテキストのみ) 
請求記号:918/46/19資料ID:21296567配置場所:1154:1階C12 
 
御伽草子集 / 大島建彦.  小学館, 1974. -- (日本古典文学全集 ; 36)  
資料ID:21440168請求記号:910.8/8C/36配置場所:移動書架B5 
 
草双紙事典 / 叢の会編. -- 東京堂出版, 2006. 
資料ID:30642270請求記号:913.57/So配置場所:3階N11 
 
日本昔話と古典. -- 同朋舎, 1998.3. --(日本昔話通観 / 稲田浩二責任編集 ; 研究篇 2) 
資料ID:10856567請求記号:388.08/3/31所蔵館:ポーアイ 
 
中国服装史 : 五千年の歴史を検証する / 華梅著 ; 施潔民訳. -- 3刷. -- 白帝社, 2006. 
資料ID:30798137請求記号:383.1/Ka配置場所:2階K13 | 
                       
                    
                   
                  
                  
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